運命は二人を
ホテルから、タクシーに乗る。
和泉は、黙って外を向いていて、終始無言だ。
私は、何をどう言えば良いのか、言葉が出てこなくて、やはり、外を眺めていた。
私たちのホテルに着くと、和泉は、私の肩を抱いて歩き出した。
部屋に着くと、ドアを閉めるのももどかしそうに、キスをしようとしてきた。
私は、反射的に、キスを拒んだ。
当たり前だ。
あの女性とキスしているのを見たばかりなのに、その唇にキスされるのは、我慢ならない。
「そうだな。あんな場面を見せられて、キスを受けてもらえないのは、当たり前か。」
「説明してほしいな。」
説明によっては、許さないこともあり得る。
「あれは、不可抗力だよ。俺は被害者だ。俺からキスしたわけじゃない。向こうからの一方的なキスだよ。」
「どうして、あの人が和泉にキスするわけ?」