運命は二人を


和泉の顔が歪み、私から視線を逸らす。

「以前に、関係があったんだ。でも、もう何年も前だ。今回の契約更新で、俺を指名してきた。婚約したことを知ったらしい。それで、最後にもう一度だけと言われた。もちろん断った。契約は無しにしてもいいと言った。少しは痛手だが、どうしても欲しいデザイナーではない。もうネームバリューも無くなってきてるしな。プライドが高いから、全て思い通りにならないと気がすまないのだろう。仕返しのつもりでキスをしてきた。」

「わかった。あなたの言葉を信じる。でも、もう今夜は、キスは禁止ね!私からのペナルティね。」

「ありがとう。わかってくれてホッとした。キス禁止は、辛いけど、罰はしっかり受け止めます。」

と、片手を顔の隣に挙げて、宣誓のスタイルをとった。

その表情が面白くて、笑いの壼にはまり、お腹を抱えて笑ってしまった。

それを見て、

「なんだよ。真面目に誓ったのに、酷いなあ。」

と、一緒に笑っている。

なんだ、やっぱり話し合う事って大事なんだと痛感した。
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