運命は二人を


ニースに着くと、私たちはレンタカーを借りた。

初めに、マティス美術館、そして、次にシャガール美術館を回った。

日本人は全くいなくて、ゆったりと静かな時間が流れていく。

私たちは、至福のひとときを過ごした。

お陰で、昨日の嫌な気持ちは、すっかり消えていった。

感動を覚えるほどの芸術を前にすると、心の中のささくれもなくなってしまうらしい。

それは、美術も音楽も同じだと思う。

夕方、予約していたホテルに入った。

昨夜は同じ部屋に居ても、あのキスシーンが頭から離れず、なかなか眠れなかった。

もちろん、何かあるはずもない。

今夜は、どういう態度を取ればよいか、自分でもわからなくなっていた。
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