運命は二人を


部屋に入ると、和泉が、

「シャワーをあびて、着替えて、食事に行こう。」

「まだ、早くない?」

「いや、早めに食事を済ませて、夜景を見に行こう。幻想的な絵のような夜景が見られるよ。」

誰かと見に来たことがあるのだろうか?疑うような気持ちを隠すことなく、私は言葉にしていた。

そう、昨夜のように話し合わなければ、気持ちがすれ違うだけだと知ったから。

「和泉は、見たことあるの?その…誰かと?」

「いや、無いよ。この間、テレビでたまたま見たんだ。俺もニースは、初めてだから。」

それを聞いて、ほっとする。ちょっとしたことにも嫉妬の感情が顔を覗かせ、自分でも嫌になる。

もっと、大らかな気持ちでいたいのに、自分の女としての汚い部分をまざまざと見せられて、自分でも戸惑ってしまう。

私って、こんな人間だっただろうかと。



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