君がいなくなるその時は
「希生!忘れ物!」
靴を履いているわたしのところにお母さんが台本片手に走ってきた。
「あ、ごめん。ありがと」
危ない危ない。学園祭に使う台本を忘れるところだった。ていうか、こんなんじゃ学園祭なんて集中できないよ………。
「行ってらっしゃい。じゃあ後でね」
「うん。行ってきます」
少しの沈黙の後、わたしは口を開いた。
「…あのさ、本当に死んじゃうんだよね?」
「あぁ」
「何で、その、………事故、とか?」
わたしは知りたかった。大聖が何で命を落としてしまうのかを。
「そこは俺にも分からない。分かるのは明日までにってことだけ。………そういう運命なんだ」
「えっ?」
「死神には、人間の運命が伝えられる。誰がいつまで生きれるかを。寿命ってやつ、それを伝えられる。んで、その寿命がくる人間を大切に思ってる奴を後悔させないために、忠告しないといけない。………残酷な仕事だろ」
死神は少し悲しそうな顔をした言った。
死神も、もしかしたら苦しんでるのかな。最低な奴って思ったりもしたけど、本当はそんなことないのなも。
「…うん。でも、何かイメージと違うかも。死神ってもっと酷いイメージがあったから、悪魔っていうか。だから後悔させないために伝える手段を選んでるのは…なんか意外かも」
「そうか」
「うん。………よし、行こっか」
──ガチャ
「おはよ!希生」