過保護な騎士団長の絶対愛
「しかし、シェリア王国なんて、コルビス王にとったら虫けらのような小さな国です。ご存じなくてもいたしかたない」

「じゃあ、シェリア王国がどんな国なのか教えて」

「そんなに急がなくても、じっくり時間はありますよ」

「え……?」


 一歩先を歩いていたガイルの足がぴたりととまる。肩越しから振り向いたガイルと目が合うと同時に、突然後ろから口元を塞がれた。


「ッ――!?」

 一瞬、何が起きたのかわからなかった。呼吸が苦しくなり、意識が朦朧としてくる。

「な、なにを……」

「ふふ、我がシェリア王国へご案内いたしましょう、ララ王女。連れて行け」

 ララの口元を塞いだガイルの兵が、力の入らなくなったその身体を肩に担ぐ。


 もうだめ、気が遠くなる……ユリウス、助けて――。


 ララの流れる髪から赤い髪紐がしゅるりとほどけ落ちる。

 ユリウスに思いを馳せながら、ララはついに食い下がる意識を手放した。
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