過保護な騎士団長の絶対愛
 ララを救出し、コルビスに戻ってからというもの、ユリウスはどうもララを過剰に意識してしまい、前のように冷静に接することができなくなっていた。

 花が綻ぶように笑うララの笑顔、絹のような流れる髪、そして熟れた果実のような唇。

 くそ、考えるな――。

 監獄から帰ってきたユリウスは、誰にも今の自分を見られないようにそそくさと私室に戻った。すると。

「ユリウス、おかえりなさい」

「ッ――、ララ様……どうしてここに?」

 ひとり私室で乱れかけた心を落ち着かせようとしていたのに、ユリウスが部屋に入ると、庭で摘んできたと思われる花々を花瓶に生けて、にこりと微笑むララの姿が目に入った。

 日も落ちかけて、夕日に照らされているララは美しく、ユリウスは一瞬その姿に見とれて声が出なかった。

「ララ様、勝手にここへ来てはいけないと――」

「なぜ? 私たち、恋人同士なのに?」

 恋人同士と言葉にされて、ユリウスは思わず顔に熱を持った。しかし、ララはあくまでもコルビス王国の王族であり、ユリウスはその守護騎士で身分差は否めなかった。それに自分は悪名高いヴァニスの生まれであることは消せない事実だ。

 ララはまったくそんなこと気にする様子もなく、もしくは気づいていないのか、ユリウスにはわかりかねた。しかし、ララのぬくもりはそんな憂いも凌駕する心地よさを感じた。

 もっとララに触れて感じたい。そんなジレンマにユリウスは悩まされるようになっていった。
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