過保護な騎士団長の絶対愛
 ※ ※ ※


 男は抑えきれない愉悦に口元を緩めずにはいられなかった。


「ガイル様! お探ししました。どこにおいでだったのですか、いきなり姿が見えなくなって――」

「ただの戯れだ」

 久しぶりに腕の立つ相手と剣を交えた。ガイルと呼ばれた男はコルビスの城から馬にまたがり、コルビスの城門をくぐろうとしていた。コルビス王国の舞踏会に気まぐれで立ち寄ってみたが、ガイルにとって、思わぬ収穫があった。付き人にひとことふたこと文句を言われたところで今はどうでもいい。


 ララ・アントリア・ウェインか、あの女は使えそうだな――。


 それにあのただの通りすがりの男、やっとみつけたぞ……ユリウス――。


 あの黒髪の男はただの男ではなかった。まさかとは思ったが、ガイルは彼が剣を構えた時に確信した。

 剣を構える時、剣を回転させてから右に大きく振り下ろす動作はヴァニスの王族に伝わる“威嚇”の意味がある。そしてそれを知っている者は限られる。ただの偶然だ。とも思ったが、彼の正体を確信する自負の方が勝った。


「ガイル様……?」

「よい、俺は今最高に機嫌がいい、行くぞ」

「はっ」

 数人の付き人を引き連れて、ガイルは不敵に笑うと、馬の嘶きとともに夜の王都へ消えて行った。
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