過保護な騎士団長の絶対愛
 ユリウスはララのハンカチを綺麗な冷水で、汚れた血を洗い流して乾かした。ララが好みそうな白地の花柄にユリウスが目を細めて小さく笑んだ。

 ララを守るためには自らが強くならなくてはならない。そう思い、モリスに認められるまで鍛錬したというのに、剣で身体に傷を負わせられたのは彼にとって屈辱以外のなにものでもなかった。


 くそ――。


 ユリウスは、地下室暮らしが長かったため、人との接し方を知らなかった。そのせいで、コルビスに来た当初、見習い兵時代には浮いた存在だった。

 幽閉されていた時、どうにかして外の世界を知る方法はないかと、思いついたのが本の存在だった。そこで剣術の極意を知り、自分も習いたいと見回りにたまたま来た兵士に訴えたことがあった。

その兵士は情に厚く、ユリウスが幽閉されていることをずっと気に病んでいたという。「男子たるもの剣の使い方くらいは知っておかなければなりませんね」と、そこでユリウスはその兵士に剣の使い方を習った。


 ――いいですか、ユリウス様、剣を構える前にこう振りかざすのですよ。


 それがヴァニスの王族のみぞ許された構えだったとは、幽閉されていた身としては知る由もなかった。ユリウスに剣を教えた兵は、あくまでもユリウスをヴァニスの王族として認識し、指南してくれていたということだ。そして、ヴァニス王国の剣技を知る昨夜の男。


 ララ様に近づく悪はすべて俺が振り払う――。
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