過保護な騎士団長の絶対愛
※ ※ ※


 コルビス王国の春は別名“ヒュプノスの春”と呼ばれる。ヒュプノスは眠りの神。温かく穏やかな気候が続くため、昼でも夜でも人々はついうとうとと眠気に誘われてしまう。

 舞踏会から一夜あけた昼下がり。


 あ~眠い――。

 燦々と朗らかな陽が降り注ぐ自室でひとり、ララは昨夜の余韻を引きずりながら、ぼんやりとした眠気の取れない目元をこする。

 レオン……素敵な人だったけど、やっぱりユリウスにはかなわない――。

 旅人って言ってたけど、旅人にしては高貴な感じがしたのよね――。

 ぼんやりとそんなことを考えていると、ドアがノックされる。


「ララ様、失礼いたします」

「はーい」

 ドアの向こうからステイラの声がしてララが気怠く返事をすると、ステイラが少し急ぎ気味で部屋に入ってきた。

「モリス国王陛下がお呼びです」

「父上が?」

「謁見の間にララ様をお連れするように使わされました」


 謁見……? 誰か来てるのかな――?


 ララがモリスに呼ばれる時は、たいてい玉座の間だ。謁見ということは、他にも誰かいるということ。

「わかった、すぐ行く」

 ララは椅子から立ち上がり、赤い髪紐で長い髪を軽く結ぶ。そして丈と袖の長いワンピースを翻してモリスがいる謁見の間へ向かった。
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