過保護な騎士団長の絶対愛
 堅苦しい挨拶だ。しかし、高度な礼儀作法を身に着けているということは、身分も上流階級の者であるとわかる。しかし、ララはこの男にいい印象は持っていない。ララの顔がほんの少し曇る。

「父上、これはいったいどういうこと?」

 モリスは玉座に腰を凭れ黙ってふたりを見据えているが、何か考えているような表情でもあった。

「昨夜の舞踏会で、お前を見初めたらしい。シェリア王国の王子だそうだ」

「え……?」

 シェリア王国――?

 聞いたことのない国だった。しかし、世界は広い。ララは自分がただ単に世間知らずなだけなのだと思った。目の前の男は、王の面前に立つほどにふさわしい装いで、昨日ガイルが語っていた商人というのも、その場だけの方便だったようだ。

 ――王子だそうだ。

 その口調から、モリスは彼のことをよく知らないと窺える。今日初めて会ったといった感じだ。一国の王子から突然、謁見の申し出にモリスも多少の戸惑いを感じているように見えた。

「昨夜はあなたの美しさに……とんだ愚行をお許しください。求婚の前に是非とも我が城へお招きたく――」

「き、きゅうこん!?」

 な、なななに言ってるの――!? 求婚って? 誰が? 誰と――?

 自分には、まだ無縁だと思っていた“求婚”という言葉を聞いてララは思わず大きな声を出してたじろいだ。
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