王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
 その中にあった一冊の星にまつわる本。

 世界の各地では星に関することを調べる研究者がたくさんいるんだそうだ。

 それを聞いたのが先週のこと。

 ウィルには、毎夜夜空を見上げていてごらんと言われていた。

 陽が沈む頃には床に就かされていたマリー。

 ウィルに話を聞いてからというもの、眠気よりも好奇心の方が勝り、夜中にこっそりカーテンを開いて、生まれて初めて夜空を見上げたのだ。

 部屋の暗さと同じ闇を抱えていた夜空は、自らの存在を強調するかのような無数の小さな光たちが、窓に切り取られた黒一面に散りばめられていた。

 ウィルの話より、本の挿し絵より、実際に目にしたものは、瞬きを忘れるほど美しいもので、宝石箱を空に撒き散らしたような夜空が、マリーの胸をこれでもかと弾けさせた。

 星の配置で、星座というものが夜空には象られているとウィルは言っていた。

 どれがどんな星座なのかマリーにはわからなかったけれど、年に一度この時期にだけ見ることができる星たちのショーが、昨夜の流星群だったのだ。
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