王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
おそらくフレイザーはこれからイベール家に、婚約を取り付けるのだろう。
そしてそれを、イベール家が断る理由はない。
先手を打てない自分が腹立たしい。
本当なら今すぐにでも、マリーを奪いに行きたいのに。
「ウィリアム様」
「なんだ……」
「さしでがましいようですが、成人祝賀の準備に王城内を初め、関係各所では当日まで多忙を極めます」
「ああ、わかっている。明日から儀式の段取りを詰めるのだったな」
自分の不甲斐なさとこれからの予定にうんざりと溜め息を零す。
けれど、ミケルは主の焦燥を汲んでいる様子で、穏やかに微笑んだ。
「聖堂では司祭も加わり、ウィリアム様のためだけに準備が進められています。その間、聖堂も司祭も他の催事に時間を割けません」
「そうだな、俺のためにみなが動いてくれて……」
そこではっとしたウィルは、勢いよくミケルを見上げた。
「ミケル」
「はい」
「俺はいつから国王に進言できる?」
「成人の儀を終えれば、その瞬間からかと」
「そうか……」
にこりと微笑むミケルに気づかされたというところは、まだ自分の未熟さを認めざるを得ない。
しかし、まだ諦める必要はない希望の光に、ウィルはサファイアの瞳を煌めかせた。
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そしてそれを、イベール家が断る理由はない。
先手を打てない自分が腹立たしい。
本当なら今すぐにでも、マリーを奪いに行きたいのに。
「ウィリアム様」
「なんだ……」
「さしでがましいようですが、成人祝賀の準備に王城内を初め、関係各所では当日まで多忙を極めます」
「ああ、わかっている。明日から儀式の段取りを詰めるのだったな」
自分の不甲斐なさとこれからの予定にうんざりと溜め息を零す。
けれど、ミケルは主の焦燥を汲んでいる様子で、穏やかに微笑んだ。
「聖堂では司祭も加わり、ウィリアム様のためだけに準備が進められています。その間、聖堂も司祭も他の催事に時間を割けません」
「そうだな、俺のためにみなが動いてくれて……」
そこではっとしたウィルは、勢いよくミケルを見上げた。
「ミケル」
「はい」
「俺はいつから国王に進言できる?」
「成人の儀を終えれば、その瞬間からかと」
「そうか……」
にこりと微笑むミケルに気づかされたというところは、まだ自分の未熟さを認めざるを得ない。
しかし、まだ諦める必要はない希望の光に、ウィルはサファイアの瞳を煌めかせた。
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