王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「この前本で見せてくれた星座や星の名前も、ウィルは指を指して教えてくれたんでしょうね」


 昨夜、ひとりで夜空を見上げていて思ったことを、ぽつりと口にした。


「いつか必ず、窓に切り取られない満天の星を見せながら、マリーに星座を教えてあげるよ」


 ウィルは、せっかくの感動を消させないよう強く誓い、真っ直ぐなサファイアの眼差しをマリーに落とした。


「マリーのご両親に、安心してマリーを俺に預けてくれるように、必ず認めてもらうから」

「私を、ウィルに……?」

「そうだよ」


 薔薇を握りしめた愛らしいマリーの柔らかな髪を、広い掌がそっと撫でる。

 一束の金色をふわりと掬い、いつになく真剣な表情のウィル。

 綺麗な青の中に自分の姿を見つけると、マリーの胸はきゅっと縮こまった。
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