王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「ここは塀の外だ。誰が聞いているかもわからない場所で、軽々しく口にするでない」

「申し訳ございません」


 頭を垂れるミケルをそれ以上は咎めることなく、ウィルは愛馬の鼻の頭を擦る。

 繋いでいた木から解かれた手綱を受け取り、栗色の愛馬へと身軽に跨った。

 馬に乗ったふたりの姿は、マリーの屋敷から程ない場所にある森の中へと吸い込まれていく。

 深そうに見える森のその向こうには、生い茂る木々に守られるように、バークレー国を見下ろす立派な王家の城がそびえ立っていた。




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