王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「マリー」
怯えてばかりいてはいけないと身じろぎすると、耳元でそっと囁く声に動きを止めた。
「声を出さないで」
聞き覚えのある凛とした声音に、はっと目を見開く。
それが誰のものなのかがわかると同時に、マリーの瞳には安堵の涙が浮かんだ。
「場所を変えよう」
マリーが声を出さないと悟ったところで、口元が解放される。
「……ウィル……っ……」
「マリー」
吐息に乗せた名前は掠れたものの、マリーを呼んでくれる優しい声に拾われた。
後ろを振り向くと、口を覆っていた掌がマリーの顎を支え、そこにウィルが柔らかな口づけを落としてくれた。
フレイザーに触れられた場所は、ウィルによって丁寧に上書きされる。
身体を反転させて彼の首にすがるように腕を回し、重なる口唇からマリーのありったけの想いを伝えた。
エルノアのそばにいるはずのウィルがなぜ今ここにいるのか、聞きたくてしょうがなかったけれど、熱い想いをくべてくれる彼に応えることでマリーは必死だった。
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怯えてばかりいてはいけないと身じろぎすると、耳元でそっと囁く声に動きを止めた。
「声を出さないで」
聞き覚えのある凛とした声音に、はっと目を見開く。
それが誰のものなのかがわかると同時に、マリーの瞳には安堵の涙が浮かんだ。
「場所を変えよう」
マリーが声を出さないと悟ったところで、口元が解放される。
「……ウィル……っ……」
「マリー」
吐息に乗せた名前は掠れたものの、マリーを呼んでくれる優しい声に拾われた。
後ろを振り向くと、口を覆っていた掌がマリーの顎を支え、そこにウィルが柔らかな口づけを落としてくれた。
フレイザーに触れられた場所は、ウィルによって丁寧に上書きされる。
身体を反転させて彼の首にすがるように腕を回し、重なる口唇からマリーのありったけの想いを伝えた。
エルノアのそばにいるはずのウィルがなぜ今ここにいるのか、聞きたくてしょうがなかったけれど、熱い想いをくべてくれる彼に応えることでマリーは必死だった。
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