王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「伝えずにはいられなかった、あんな顔をされてしまっては」

「初心い令嬢は、貴方様のお気持ちにさぞ戸惑われたでしょうな」

「ああ、ついでに存分に怖がらせてしまったことだろうさ」


 思わず、急いてしまった。

 ゆっくり、彼女の気持ちが自分の想いに同調してくれるまで、待つつもりだったのに。

 ウィルは、マリーが十六になる日を心待ちにしていた。

 そして、程なくして彼も成人を迎え、自分の祝賀パーティーにおいて、マリーには社交界デビューを飾らせるつもりだった。


 よりによって、先に招かれたのがアンダーソン家の社交パーティーとは……


 あの無垢な瞳が他の男を映すのは、どうしても耐え難かった。

 あの小さな手を誰かに取られると想像しただけで、嫉妬でおかしくなりそうだ。
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