王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
 力強い言葉が、不安に揺れるマリーを支えてくれるようだ。

 自分を見つめてくれる瞳に、胸の奥から溢れるように湧き上がってくる何かを感じる。

 熱く痺れるような気持ち。

 彼を思えば、卑屈な感情も勇気に変えられる気がする。


 ウィル、私のこの気持ちがなんなのか……貴方に聞いてみたい……。

 もしかしたら貴方も、こんな気持ちを抱いているのかしら。

 もしそうなら、私……


 マリーは心に湧いた疑問が一体何なのかを掴みかけようとした。

 
「この際はっきり言わせていただきます」


 今すぐにでもその答えを確かめたくて、ウィルのそばに駆け寄りたいと思うマリー。

 それを阻むエレンは、嫌悪を露わにしてウィルに辛辣な言葉を放った。


「嫁入り前の娘に触れるなど、なんていやらしい下心を抱えていたんでしょう! 汚らわしいにも程があります!!
 それに星空ですって!? 貴方まさか、夜中にお嬢様を連れ出したのではないでしょうね!?
 お嬢様に何をしようとしたのかわかったものではないわ!」
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