王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「彼は、無知な私に楽しさを教えてくれた恩人よ……っ」
ウィルの立場を守ろうと震える声で訴えると、エレンは悲しげな表情をマリーに向けた。
「大切に育てていらしたお嬢様がそんなことを言っていると知ったら、旦那様や奥様がどんなに悲しまれるか……エレンはそれを考えただけで本当に胸が痛みます」
やはりエレンにとっては、マリーが入れ知恵されてしまったのだとしか見えないのだろう。
心底悲しそうなエレンの顔に、マリーは自分がそうさせてしまっているのだと罪悪感に駆られる。
私が知恵をつけることは、周りを悲しませるようなことだったの……?
先日、夜中にこっそりと布団を抜け出し、胸を弾ませながら仰いだ窓の外。
自分が不良娘にでもなったような昂る気持ちと、初めて見る美しい星空に圧倒されたあの感動。
胸のすくような体験をしたことは、なにものにも代えがたい生涯の宝物だと思ったのに。
その大切な宝物が輝きを失くしてしまいそうで、胸がぎゅうっと締めつけられる。
あまりの苦しさに、うつ向く目元に涙が滲んできた。
ウィルの立場を守ろうと震える声で訴えると、エレンは悲しげな表情をマリーに向けた。
「大切に育てていらしたお嬢様がそんなことを言っていると知ったら、旦那様や奥様がどんなに悲しまれるか……エレンはそれを考えただけで本当に胸が痛みます」
やはりエレンにとっては、マリーが入れ知恵されてしまったのだとしか見えないのだろう。
心底悲しそうなエレンの顔に、マリーは自分がそうさせてしまっているのだと罪悪感に駆られる。
私が知恵をつけることは、周りを悲しませるようなことだったの……?
先日、夜中にこっそりと布団を抜け出し、胸を弾ませながら仰いだ窓の外。
自分が不良娘にでもなったような昂る気持ちと、初めて見る美しい星空に圧倒されたあの感動。
胸のすくような体験をしたことは、なにものにも代えがたい生涯の宝物だと思ったのに。
その大切な宝物が輝きを失くしてしまいそうで、胸がぎゅうっと締めつけられる。
あまりの苦しさに、うつ向く目元に涙が滲んできた。