王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
もしアンダーソン家へ嫁ぐことになったら、この宝物だけを支えに私は生きていけるかしら……
それを教えてくれたウィルとは、当然会えなくなることはわかる。
マリーは、何よりそれが一番悲しいことだと、目元の潤みを濃くした。
「さあお嬢様、参りましょう。フレイザー様がお着きになる前にお仕度しなくては」
マリーの心情を理解しないエレンは、逃してはならない機会に意気揚々とマリーの小さな手を引いて行こうとする。
そこにいる彼から引き離されていくような感覚に、マリーの足は重く動いていかなかった。
踏み止まろうとするマリーに振り向いてくるエレン。
怪訝な表情をした彼女に、呼びかけたのはウィルだった。
「エレンさん」
とても心を落ち着ける彼の澄んだ声に、マリーははっと顔を上げる。
「貴女の言う通り、マリーアンジュ嬢との逢瀬に、下心がなかったとは言い切れません」
「ほら見なさい、汚らしい気持ちでいたのではないですか」
「ですが」
そっと瞬いたウィルは、しっかりとふたりを見据えて、淀みのない言葉を口にした。
それを教えてくれたウィルとは、当然会えなくなることはわかる。
マリーは、何よりそれが一番悲しいことだと、目元の潤みを濃くした。
「さあお嬢様、参りましょう。フレイザー様がお着きになる前にお仕度しなくては」
マリーの心情を理解しないエレンは、逃してはならない機会に意気揚々とマリーの小さな手を引いて行こうとする。
そこにいる彼から引き離されていくような感覚に、マリーの足は重く動いていかなかった。
踏み止まろうとするマリーに振り向いてくるエレン。
怪訝な表情をした彼女に、呼びかけたのはウィルだった。
「エレンさん」
とても心を落ち着ける彼の澄んだ声に、マリーははっと顔を上げる。
「貴女の言う通り、マリーアンジュ嬢との逢瀬に、下心がなかったとは言い切れません」
「ほら見なさい、汚らしい気持ちでいたのではないですか」
「ですが」
そっと瞬いたウィルは、しっかりとふたりを見据えて、淀みのない言葉を口にした。