王太子殿下は無垢な令嬢を甘く奪う
「何……?」
力を緩めたウィルの腕を引きはがすと、フレイザーは逆に威圧するように顔を近づけてきた。
「お前には、アンダーソン家と婚姻関係を結んでもらわなければ困るんだよ」
暗黒の瞳には、ウィルでさえもぞくりと背筋を震わせる何かが見えた。
その奥ではよからぬ思惑が蠢いている。
執拗にフレイザーの妹との結婚を推す理由は、マリーを手に入れるためで、それを邪魔するものを排除したいからだけなのか。
昔はこんな嫌悪を感じるような目はしていなかったと、鋭く細められる黒い瞳に、幼少の頃を思い出した。
十以上も年上のフレイザーを、ウィルは兄のように慕っていた時期があった。
本格的な剣術を教えてくれたのはミケルだったが、フレイザーは幼いウィルに木の棒を渡し、戦いへの入口を遊びの延長として学ばせてくれた。
男としてあるべき強き心を語ってくれたのもフレイザーで、ウィルが十歳を迎える前には王太子としての自覚が芽生え始めていたのも彼のおかげと言っても過言ではない。
力を緩めたウィルの腕を引きはがすと、フレイザーは逆に威圧するように顔を近づけてきた。
「お前には、アンダーソン家と婚姻関係を結んでもらわなければ困るんだよ」
暗黒の瞳には、ウィルでさえもぞくりと背筋を震わせる何かが見えた。
その奥ではよからぬ思惑が蠢いている。
執拗にフレイザーの妹との結婚を推す理由は、マリーを手に入れるためで、それを邪魔するものを排除したいからだけなのか。
昔はこんな嫌悪を感じるような目はしていなかったと、鋭く細められる黒い瞳に、幼少の頃を思い出した。
十以上も年上のフレイザーを、ウィルは兄のように慕っていた時期があった。
本格的な剣術を教えてくれたのはミケルだったが、フレイザーは幼いウィルに木の棒を渡し、戦いへの入口を遊びの延長として学ばせてくれた。
男としてあるべき強き心を語ってくれたのもフレイザーで、ウィルが十歳を迎える前には王太子としての自覚が芽生え始めていたのも彼のおかげと言っても過言ではない。