レンタル魔法少女
六月だと言うのに雨雲一つ無い晴れ渡った空、髪を梳くように吹く風、鳥と並行してふよふよと飛ぶ妖精達。
はー……平和。
何も無い。
私も、世間も。
魔道具屋の屋根の上で寝転びながら、私は溜息を空に吐く。
学校にも行けない、仕事も出来ないせいで暇。
おまけに十五歳というオシャレに興味を持つ年頃だってのに、お金が無いせいで着る服はいつも古着屋で買ったボロい上下。
はーあ。無様すぎ。
なんで魔法少女ってだけで、ここまでされるんだろ。
人種差別って馬鹿馬鹿しいと思うけどなぁ……
魔法族だろうと人間族だろうと魔法少女だろうと、私は黒月 鞠菜(くろつき まりな)っていう女の子だ。
どこ行っても「黒月 鞠菜」じゃなくて「魔法少女」として見られるから、嫌になる。
そもそもこんな人種差別の原因は、魔法族と人間族のハーフである魔法少女が、過去に魔法族から「人間族!」と、人間族から「魔法族!」と仲間外れにされ、段々とカースト制度最底辺に堕ちた事らしい。
ガキのイジメみたいなのが原因とか、アホかよって思うけど、世の中大体そういうもんだから恐ろしい。
「あ、魔法少女だ」
「こら、見ちゃいけませんよ」