【短】虹色
「…いいよ?」
「……な、に…?」
「…泣いても、いい」
「…っ」
沢山背負った重く切ない闇。
癒える希望さえ見出せないような、傷跡。
「やっぱり、茉莉亜の事、放っておけない…」
そんな風に微笑む彼。
その微笑みと同じ、何処までも限りなく穏やかな温もりは…。
ぎゅう。
「俺のものになんなよ。大事にするから…」
なんて、囁きを耳元に注いでくれる。
鮮やかな輝きであたしを照らして、そっと、色のない世界へと…光を運んでくれるから。
ずっと、手を伸ばしていたの。
ずっと、焦がれていたの、と…。
堰を切ったように溢れ出す感情は止め処なく。
すんなりと、耳に流れ込んでくる心地良い声と共に、あたしを此処から掬っていった。