真夏のプール
「はぁ…」
2度目のため息をついた時、右隣の席から小さく折りたたまれた紙が飛んできた。
私はそれを手にして、
『あぁ、私の事気にかけてくれてる』
ってちょっと嬉しくなる。
私の右側の席に座るのは、筒井 真海(つつい まひろ)。
1年の頃からずっと同じクラスで、私の好きな人。
何かと縁があって委員会とか、掃除の係とか、隣の席になることが多くていつの間にか好きになっていた。
横目で真海を見ると、彼もまた私をチラッと見てちょっと笑った。
そしてすぐに正面の黒板に向き直す。
あぁ、その笑顔反則だって。
数学の先生は怖いから怒られたらとんでもない事になる。
だから真海はすぐ前を向いてノートをとり始める。
そういう所もちょっと可愛い。
時々私は隣の席を盗み見る。
授業中寝てる顔も、真剣にノートをとっている顔も、私をチラッと見て笑う顔も、全部見れる。
だからこの席は、神席なの。
そういえばあいつ、何を書いて投げてきたんだろ。
真海が私に投げた紙を広げてみると、そこには男の子らしい字で
‐‐ 何つまんなそうにしてんだよ ‐‐
そう書かれていた。