真夏のプール




私はそれを見てちょっとニヤけてしまう。



ふふ、バカだなぁ。

先生にバレたらめちゃくちゃ怒られるのに。



って思ったりもするけど、好きな人に気にかけてもらうのってやっぱり嬉しい。

でも真海は誰にでも優しくてちょっかいを出すのが好きだから、ただ単に面白がっているだけだと思う。

さっきの休み時間だって、廊下で資料を落としちゃった女の子を手伝ってた。

しかもそれを全部、職員室まで届けていたという。


そういう紳士的な行動をサラッとしちゃうような奴。


まぁ、そんなのを目撃しちゃうと私の完全なる片思いなんだなぁってちょっと悲しくなる。


私は、全くノートをとっていないのに、カモフラージュの為にずっと手にしていたシャーペンの芯を少し出して、その紙に書き込む。




‐‐ 数学嫌いだからつまんないんだもん ‐‐




よしよし、まぁ綺麗なんじゃない?

出来るだけ綺麗な字で、でも力まずに。



真海に読まれるなら綺麗な字だって思われたい。

そんな事を思いながら返事を書いて、またその紙を小さく折りたたむ。

そしてそれを先生の目を盗みつつ、真海に送り返す。


どんなに小さいことでも気にかけて、少しでも女の子として見られるように。


そんな努力をここ2年間続けてきたわけです。



女の子って疲れるよね。



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