やりなおしちゃってもいいんですか?
顔を上げると浩二は私をじっと見つめて目が合うと

フッと笑った。

そ、そうよ。こういうのも昔からまったく変わってない。

だから目が合う度にドキドキしちゃって恥ずかしくて

目を逸らしてしまう・・・って私もあの頃から全く変わってないじゃん。

「・・・で?何食べるの?」

現実に戻らなくてはと咄嗟に出た言葉になぜか浩二は首を横に振った。

「パン買って帰る」

浩二は頬杖をついたまま満足そうに答える。

「え?じゃ~なんで座ってんの?」

パンを買って帰るならこんなことしなくてもいいのでは?

理解に苦しむ私に浩二は懐かしむ様にフードコートを見渡す。

「お金がないながらもここで何時間も勉強したり、話をしてた時が
俺は一番楽しかったし充実してた」

それは私も浩二と同じ気持ちだ。

あの頃の私は、とにかく2人で何をしたいとかどこかに行きたいじゃなく、

一緒にいたいだけだった。時間が許す限り浩二と一緒の時間を過ごしたかった。

「私も一緒。あの時の私は少しでも一緒にいたいって思ってたから・・・ここは便利だったな~」

あの頃を思い出すようにまわりを見渡す。

すると浩二は真剣な眼差しで私を見つめる

「じゃあ・・・今は?あの頃みたいな気持ちにはならない?」

「え?」

「俺は同じだよ。ずっと一緒にいたい」

ど、どうしよう。なんて答えよう。

素直にうんと頷くだけでしょ?さっきまで素直だったはずの私は

「うん」と言う言葉が

喉まで出かかっているのにその一言が出てこない。

何で出てこないのよ!私のバカ。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか

浩二は席を立つと優しい眼差しのまま手を差し出す。

「パン買って・・・帰ろうか」

私は返事の代わりに浩二の手を取った。
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