やりなおしちゃってもいいんですか?
私は半身を起こし「どうだったの?」と母の方をみる。

すると母の後ろに誰かがいる事に気付き、咄嗟に姿勢を正す。

「やっぱり水漏れだったんだけどね?原因がどこか私じゃさっぱりだから、とりあえず
明日、業者さんに見てもらうように手配したんだけどね~」

と言いながら母は後ろに立っている人に視線を移す。

「彼の部屋が思った以上に被害が大きくて・・・ほら、あのマンション今、満室でしょ~
代替えの部屋もないから連れてきたの」

連れてきたって犬やネコじゃないんだけど・・・

しかし母は相変わらず機関銃の様によくしゃべる人だ。

「とりあえず、修理が終わるまでここで生活してもらう事にしたから。・・・ねっ!」

母は何だか楽しそうに男の人に笑いかけた。

いやいや、いくら入居者と言えど、全く知らないに近い男性を

この家に住まわせるっていうのはあり得ないんじゃないの?

それに貸してる部屋はあのマンション以外にもいくつかあるはずなのに・・・

大体、父は単身赴任中で今は私と母の女二人暮らしなのよ。

「ねぇ母さん。大丈夫なの?防犯的にアウトなんじゃ・・・」

母の腕を掴んで小声で訴えたが母は余裕の表情を見せる。

「なーにいってんの?逆に何かあった時、男性がいる方が安心じゃない?それに
私この彼の事気に入っちゃったのよね~~」

母は満面の笑みを浮かべる。

「はいはい、わかったわよ」

納得いかないものの時間も時間だし、ここまで来た人を追い返す訳にもいかないので諦めた。

すると母は男性に向かって手招きをした。

「杉谷君。こっちに来て頂戴」

ん?杉谷?聞き覚えのある名字に顔を上げ言葉を失った。

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