やりなおしちゃってもいいんですか?
「メグ、杉谷浩二くん。メグと同い年だって。で、この子は私の娘で・・・」

母は私に挨拶しなさいと言いたげに目配せをする。

「め・・・めぐみ・・・です」

私は視線を合わさないように伏し目がちに挨拶する。

すると母がすかさず「愛想がなくてごめんなさいね~」と間に入る。

愛想がなくてとかのレベルじゃない。

だって彼は・・・


「初めまして、杉谷(すぎたに)浩二(こうじ)です。急にこんなことになって
ご迷惑おかけしますがよろしくお願いします」

初対面な挨拶にまたも言葉を失う。

「何がご迷惑よ。迷惑かけたのはこっちの方なんだから気にしないでね」

母は私とは真逆で愛想をふりまきながら隣の和室の押し入れから客用の布団を取り出す。

「杉谷君、2階に1つ部屋が空いてるから使って頂戴。あと・・・悪いんだけどこの布団運んでくれないかな」

彼は笑顔で「はい」と返事をすると、布団一式を軽々と持ち上げ母について2階へと上がっていった。

まるで寮で生活してる学生と寮母の会話のようで

私は口を開けたまま呆然とする。

どういうこと?なんでここに浩二がいるの?

2人の姿が見えなくなると全身の力が抜けるように私はその場にしゃがみ込んだ。

何を隠そう、彼は私が初めて付き合った人であり、苦い経験をした相手でもある。

でもさっきの初対面の様な挨拶ってなんなの?

・・・まさか本当に私の事憶えてないんじゃ・・・ううん、あり得る。

あれだけのイケメンならまわりがほっとかないだろう。

きっと私なんて今まで付き合ってきた多くの女性の中の一人で、

それならそれでいい。その方が好都合だ。

だけど悲しいかな私はちゃんと彼の事を憶えてる。

まさかこんな形で再会するなんて思ってなかった。

どうしよう。どうやって接したら良いのだろう。

とりあえず、今のうちに部屋に戻ろう。

それから明日からのことを考えよう。

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