やりなおしちゃってもいいんですか?
なんて考えている間も浩二の目線はしっかり食材だったが

豆腐をカゴにいれると別の売り場へとカートを押す浩二を私は引き留める。

「浩二、油揚げは?」

「油揚げ?」

私は刻んだ油揚げを取るとカゴにいれる。

すると浩二は不思議そうにカゴの中の覗き込む。

「そう、油揚げ。これ入れるとさ~出汁を吸った揚げが
プニプニになって食べるとめっちゃおいしいんだから」

腰に手を当てちょっと得意げに言うと浩二はクスッと笑った。

「な、なによ」

「ん?楽しみだな~っておもって」

笑った顔がかっこ良くって私は不覚にも見惚れてしまう。

すると私達の横をすれ違った女性客が振り返る。

視線の先は浩二だ。

微かに聞こえる会話は「あの人めっちゃかっこいい」「やっぱ彼女?」

付き合っていた頃、デート中に通りすがりの他校の女子が

同じ様な事を言ってたのを時々耳にしたっけ

一緒にいて釣り合いがとれているのかな?

私って常に自分に自信がなかったから人の目が気になっていたっけ。

でも・・・今は彼女じゃないけどね・・・

食材を真剣に選んでいる浩二と目が合う。

「ん?どうした?エビ団子と、かに団子どっちがいい?」

私と違って人の目など全く気にした様子のない浩二の頭の中は

鍋でいっぱいの様子。

「エビ」と答えると浩二は楽しそうにカゴに入れた。
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