やりなおしちゃってもいいんですか?
どうせ予定もないし、ちょうどよかったかも。

私は早速イチゴジャムを作り始めた。

思った以上にたくさんできそうなので食器棚から

ガラスの瓶をいくつか取り出し

煮沸し、出来上がったジャムを入れる。

「1、2、3、4…4つか~」

出来上がった瓶を数えながらふと思った。

これ…浩二食べるかな…

考えてみれば私、あの時のお礼をしていない。

出来上がったイチゴジャムの入った瓶を手に取ると

小さな手つきの紙袋にジャムを入れた。

メールや電話は躊躇してしまうのに

気が付けば自転車に乗って浩二のマンションへと向かっていた。


浩二のマンションに着くまで私はずっと心の中で繰り返した。

ただ渡すだけ。

嫌いなら誰かにあげちゃってもかまわない。

いなけりゃ玄関のドアノブにかけてメールしておけばいい。

会いたくて行くんじゃない。

お礼に出来立てのイチゴジャムを渡すだけ。

もし家にいたとしてもすぐに帰る・・・と

無事に渡すことができたら帰りに近所の美味しいパン屋で

パンを買ってさっきのイチゴジャムを

たっぷりぬってまったりする。

でも家に近づくにつれ私の心拍数が確実に早くなる。

緊張してる?

・・・してるかも。

だってただ渡すだけ…だけど男の人の家に行くわけで、実はそういうのは

初めて。
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