やりなおしちゃってもいいんですか?
恐る恐る体を起こすとソファーの背に顎を乗せた浩二とばっちり目が合う。

「な、なんでいるの?」

「何でって玄関が開いてたから入ってきた」

浩二は玄関を指さす。

「そ、そうじゃなくて何でここにきたの?」

怒りだとか話を聞かれた恥ずかしさだとかもう頭はぐちゃぐちゃだ。

「お言葉を返すようですが、俺はそこで待ってろっていいましたよね?
それを無視して猛ダッシュ。
しかも立ち漕ぎで走り去る…なので追いかけてきましたが何か?」

浩二も怒りを抑えながら…私を睨む。

でもこっちだって黙っちゃいられない。

「はぁ?彼女との時間を邪魔しちゃいけないから帰っただけですがなにか?」

私もにらみ返す。

「え?お前なにいってんの?っていうか…あれは帰ったとは言わない。逃げたっていうの」

「逃げてません。帰っただけです」

「立ち漕ぎ猛ダッシュで?」

浩二は笑いをこらえるように口に手を当てた。

それが余計にむかついて私は勢いよく立ち上がる。

「立ち漕ぎダッシュ馬鹿にしたな!」

腰に手を当て睨みつけると浩二も立ち上がる。

「いや、お前の立ち漕ぎ姿、階段の踊り場から見てたけど意外とよかったぜ」

浩二がニヤリと笑う。
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