やりなおしちゃってもいいんですか?
浩二は私よりも先に外に出た。

私は久々に履くサンダルに自然と背筋が伸びる。

玄関前にある姿見で再度全身をチェックし、

本当にこの服で良かったのかと思いながら

外に出ると家の前に白のステーションワゴンが止まっている。

運転してるのは浩二だ。

「乗って」

助手席を指さされ私はぎこちなく助手席に座る。

シートベルトをして膝の上にバッグを置くと浩二が

「後ろに置くよ。貸して」と手を差し出す。

緊張のせいか、「はい」とか「うん」とか返事も出来ず

無言でバッグを渡すと

浩二はバッグを後部座席のシートに乗せた。

そしてゆっくりと車が動き出した。

車の中は聞いたことのある洋楽が流れている。

でも会話はない。

聞きたいことがないわけじゃない。だけど車に乗ってから妙に緊張して

話しかけにくい。

数十分前まで言い合いしたのに?と心の中で一人つっこむ。

だがそんな沈黙を破ったのは浩二だった。

「な~に緊張してんだよ。さっきはえらく饒舌だったのに」

正面を向いたまま視線をチラリと私に向けた。

「は?き、緊張なんて・・・ただ」

「ただ?」

「私の知ってる浩二は高校生までだったたから車持ってたり、
運転したりっていうのに少し驚いただけ」

チラリと浩二の方を見ると目が合い慌てて前を向く。

「俺、北海道に住んでただろう?東京と違ってあっちは車がないと何かと不便なんだ
だから学生の頃から運転してる。だから安心しろ」

浩二が私に笑いかけた。

運転に不安があるわけじゃなくて2人キリっていうのに緊張してた

って事は黙っていようと思った。

ところでどこへ向かっているのだろう。
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