March

中間テスト

演奏会が終わって、三年生の先輩が引退した翌日。
わたしは、ホームルームの時間にしまったと思った。
中間テストが、もうすぐだということをようやく知ったのだ。忙しくて、すっかり忘れていた。この前の数学の小テストなんて、51点しか取れなかったから、今度は頑張ろうと思ったのに。
それから後悔しつつも頑張って勉強しているけれど、中間テストが明日から開始だと思うと少しナーバスになる。
「保科君勉強してる?」
「うーん………ぼちぼちかな」
将紀君のクラス、1年5組にわたしは忘れ物を借りに行っていた。世界史の教科書を忘れたのだ。
「教科書ありがと。授業終わったら返すね」
「うん」
わたしは足早に教室に戻り、世界史の授業が始まるのを待った。世界史は好きだ。
世界史のテスト勉強は不自由しないが、数学は本当にてこずっている。
数学といえば、この間の数学の小テスト、将紀君は93点だったらしい。ぼちぼちしか勉強していないらしいが、影ではすごい努力をしているに違いない。
わたしは世界史の先生の板書を手がくたびれるまでひたすら写して覚えた。


授業が終わって、部活も無いので今日は帰って勉強の続きをしようと思い立った。
駅にいくと、将紀君がいたけれど、彼が一心不乱に参考書を見ていたので、邪魔しないように、わたしも参考書を取り出し、眺め始めた。
「よっす」
「あ、陽菜」
陽菜が話し掛けてきた。彼女も参考書を手にしている。矢鶴高校生は皆テストが近付くと、目の色を変えて勉強するのだなぁ、と思った。
「何の参考書?」
「これは古典だよー。陽菜は何見てるの?」
「現代社会。覚える用語多いよねー……」
「うん…明日は何のテストだっけ」
「ライティングと現代社会と数学Aだよ……大変だよね」
「うわぁー……数学あるのー?嫌やー」
「数学苦手?わたしも」
「あんなの無理だよー」
「だよな」
やっぱり数学が苦手な人は多いらしい。
私は分からなかったら将紀君に頼ろうと思った。
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