March
中間テストは、とりあえずやり過ごすことができた。最終日の4日目。
わたしは、テストが終わって嬉しくて、早速部活をしに行った。
楽器を出していると、サックス吹きの槙田さんが部室に入って来た。
「藤原さん、わたし今日の数学のテスト赤点かも知れない」
「うん、わたしもやばかったよ…………とりあえず50点とれてなさそう………」
「うん、そんな感じ。わたし文系だなぁ………ちょっと理系に憧れてたけど……」
槙田さんの後ろから、今度は2年生でホルンの緒方先輩が顔を出した。
「理系もそんないいもんじゃないよー」
「緒方先輩」
「いや、理系かっこいいですよー」
「だってー、文系より授業ちょっと多いしさ…」
「ええーそうなんですか?じゃあわたし文系でいいや」
「まあ、まだ文系理系の選択まで時間あるからゆっくり考えてか」
「はい、そうですね……」
楽器を手早く出し終えた先輩は、ホルンを吹き始めた。先輩のホルンは、まろやかで素敵な音だった。


「あ、保科君だ」
「………やあ」
外を見ると、将紀君がいた。
見ると、今日テストが終わったというのに、もう次のテスト範囲の勉強をしていたみたいだ。
「テスト終わったばっかなのにもう勉強してるの?」
「うん」
「なんで?」
「俺医学部行きたいから。勉強しなきゃでしょ」
「……医学部?すごいね、わたしには考えられないや」
「そっか」
「………そういや藤原さんはさぁ」
「何?」
「歌とか、好き?」
将紀君はいきなり聞いてきた。
「うん…………好きだけど、どうして?」
「そっか。俺実は合唱部と兼部しててさ、新入部員募集してるからどうかなと思って」
「え?うちの合唱部って女性合唱じゃなかった?」
「ああ、俺ピアノ伴奏だから」
「あ、そうなんだ。ピアノ弾けるんだ……。かっこいいね。わたし弾けないから……」
「うん。考えといて。今度の合唱コンクールに向けて練習したいんだけど部員が足りなくてさ」
「………うん、分かった」

合唱部なんて眼中になかったけど、わたしは近々部活に見学に行こうと思った。
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