March

はじまりの音

「君達くらいのレベルになるとー、こんな計算は先生は省略したいのですが、ここでプラスマイナスの符号を間違える者がクラスに5人くらい出て来るので板書しますねー」
高校生活が始まった。
わたしは1年4組になった。同じ中学出身の木下早苗さんも一緒だった。
早苗はわたしより成績がよくて、中学ではいつも1番だった。リーダー的存在で、学級長になった。
「えー、この絶対値の外し方は注意です」
先生の言うことをひたすらノートに書き込んでいた。わたしは数学が苦手になりそうな予感がしていたから頑張っていた。

授業が終わると、先輩達は部活へ行くみたいだった。わたし達一年は、部活の見学だった。
「絵梨香どこ行くの?」
「んー、吹奏楽部。もう決めてるから……陽菜は?」
「そうなんだ。私は地味に放送部にでも行くよ」
「そっか。バイバイ」
「バイバイ」
陽菜は隣の学区の中学出身で、最近友達になった子だ。サバサバした性格で好感が持てた。


吹奏楽部の先輩達は合奏をしていた。
中学の時とは比べものにならないくらい音がまとまって、いい響きだった。わたしは感動した。
「ねぇ、何の楽器の人?」
「わたしはフルート吹いてたよ」
「じゃあ一緒だね!私もだよ」
隣にいた子が話しかけてきた。目鼻立ちがはっきりしている美人な子だった。
「そうなんだ!名前はなんていうの?あ、わたしは藤原絵梨香だよ」
「わたしは岡田理華だよー。もしかしたら同じパートになるかも知れないね。よろしく」
「うん、よろしくー」
新しい友達がまた一人できた。高校に入ってからもう数え切れない位の人に会った。


次の日はいよいよ正式入部の日で、わたしは楽しみに思いつつ帰路についた。
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