HARUKA~始~
いつ、どこで私がアルバイトをしているのを知ったのか分からない。

突然。本当に突然、彼女が下校途中の私の前に現れた。

「私、あなたの秘密知ってる。学校に内緒でバイトしてるでしょう?」

私は息を呑んで、彼女の次の言葉を待った。


「バイト先はカフェさくら。入学して早々に校則違反するなんて、いい度胸してるじゃん」


「だから何ですか。私にだって色々事情があるんです」


「事情ね~。...あれでしょ。家族が…」


「それ以上言わないで!!」 


「何ムキになってるの。あんたが引き金引いたんじゃん」


頭の中に思い出したくない映像が流れる。

胸が急激に締め付けられる。 

まぶたの奥がジーンとして熱を帯びる。

喉が焼かれるような痛みに襲われる。

私はその場にしゃがみこんだ。


「何よ、被害者ぶっちゃって!!そんなに怖いの、現実を受け入れること。―――…弱い女」




呼吸が荒くなる。


はあ…


はあはあ…


はあはあはあ…


く…―――――苦しい。


「とにかく、あんたに私に逆らう権利は無い。もし私の言うことに逆らったら、あんたの秘密全部バラすから」
 

そんな…


それだけは―――...止めて。 


「じゃあね~。お大事に~」


勝手にやって来て、一方的に別れを告げた八千草楓。

彼女は一体、何者?


はあ…

はあ…





ふー…


ようやく落ち着いて膝に手をつきながら立ち上がる。





カシャカシャッ…




前を歩く彼女が振り返り、私の無様な姿をカメラに収めた。







私は、これから怯えながら生きて行くしかないのか…

空を見上げると、雨粒がポツリと頬に落ちて流れた。

涙も流れた。


熱くて熱くて、その温度が生きることを肯定している。







だけど…

私はこのまま生き続けて良いのかな。











生きる意味がまだ分からない。

止まったまま。

あの日から、私の心は凍ったまま。








会いたいよ。


会いに来てよ。


私の1番、大切な人。
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