HARUKA~始~
夏の日差しはきつい。

紫外線対策とケガ対策で上下長袖でやってきてしまったが、これでは私が蒸されて熱中症になってしまいそうだ。

夏休みだというのに私は休めない。

ドッヂボールチームのキャプテンは関くんになり、彼の真面目さ故に練習は週3日、午前9時から午後11時までの2時間行われる。

週に3日も運動なんてしたことが無かったから、これが当分続くのかと思うと気が重かった。


「おはよう」

「あっ、おはよう」


暗い顔の私を晴らしてくれたのはふわふわの優奈ちゃんだ。

キャプテンの関くんの次に来て、こうしてみんなに声をかけて回っている。

みんなを明るく照らす太陽。

その例えが一番あっている。

「玄希くーん」

ふわふわちゃんが手を振った先にいたのは
石澤玄希。

彼は暑さに弱いのかフラフラ覚束ない足取りでこちらに向かって来る。


「はるちゃん、おはよぉ」


私よりふわふわちゃんに挨拶しなよ。

私は聞いていないふりをした。


「はるちゃん?」


ヤツが私目掛けて走ってくる。

ヘロヘロの頼りない走りに背を向け、ヤツと距離を取った。


「玄希くん、昨日のテレビ見た?駅前にパンケーキ専門店できて、スッゴくおいしそうだったよ。今度一緒に行かない?」


ふわふわちゃんが気さくに話し掛けるも無視。

狙った獲物は逃がさない精神を発揮し、ヤツから遠ざかったはずなのに、どんどんキョリは縮まっていた。


「はるちゃん、グッドモーニング」


また聞こえないふりをしてそっぽを向く。


「聞こえないの?もしかして突発性難聴!?それ、まずいよぉ」

「聞こえてるから。はい、おはよう」


口を聞くつもりがなくてもなぜかいつもヤツのペースに翻弄されてしまう。

まるで、ヤツの思い通りに動かされる将棋のコマのよう。


「そろそろ練習、始めるよ~」


関くんの呼びかけで会話は遮断され、初めての体育祭練習が始まった。
< 34 / 84 >

この作品をシェア

pagetop