HARUKA~始~
「はーるちゃん!」
「うわっ、びっくりした!」
青々とした葉が生い茂る桜並木から突然ヤツは飛び出して来た。
某ゲームのピカ○○○が出現したのと同じような感覚。
「さっきはごめんなさい」
今日はやけに素直。
いつもは
「はるちゃん、笑ってくれなぁい。ケチぃ」
とかなんとか言う癖に…
裏がありそう。
嫌な予感。
何も話しかけられないうちに立ち去ろうと急ぎ足で歩く。
「待ってぇ」
男だからか走るのは速いらしく、すぐに私の左隣りをキープした。
「ついて来ないで」
「許してくれないの?」
「うん。断じて許しません」
「はるちゃんのケチぃ…」
でたでた、いつもの。
チラッと盗み見すると、ドングリをほっぺに入れすぎたリスみたいに、ヤツはまん丸の頬を膨らませていた。
「じゃあ、許してもらえるように、はるちゃんに良いお知らせをお教えしまぁす」
良い知らせなわけない。
コイツが持ち込むのは、悪い知らせに決まっている。
聞くまでもない。
「来週の花火大会の日、おれ、フリーでぇす!!」
うわっ、そう来たか。
どんな変化球が来ようとドストレートが来ようと私の答えはただ1つ。
「行かない」
「えぇ、なんでぇ!?こんな良い機会めったにないよぉ」
「めったにあります。
少女漫画とか読まないからあんまり分からないけど、夏祭りに花火大会なんてお決まりのパターンじゃない?
私、興味無い。0.1パーセントも0.01パーセントも興味無い。他の女の子誘って」
私がそう言い放つとヤツの割にはかなり真剣な表情になった。
猛暑特有の生ぬるい風が吹き抜ける。
白いワゴン車が急な坂道を大急ぎで上って行く。
後方からの女子の賑やかな笑い声が徐々に大きくなる。
しばらくの沈黙があって、ヤツは口を開いた。
「はるちゃんはおれのこと、どう思う?」
「―――――...えっ?」
不意打ち過ぎる。
頭が質問に追いつかない。
この暑さが思考の回転を遅らせている。
そして、ヤツの真面目な質問内容もそれに加勢して余計に遅くなる。
太陽の光が白い私の肌を焦がす。
...だけじゃない。
私の胸までジリジリと焦がしていく。
「はるちゃん」
ヤツが2度目の沈黙を破るように私の名前を呼んだ。
いつもより、ワントーンもツートーンも低い声で…
「おれはね、はるちゃんじゃなきゃダメなんだ。はるちゃんの代わりはいないんだよ」
私の代わりはいない…?
「おれにとって、はるちゃんは特別だから。その先は言わないで置くけど…」
ヤツはそこまで言ってニンマリと笑った。
さっきまでの刃のような鋭さは夏の暑さで蒸発した。
「じゃあねぇ、また明後日!!」
何も嬉しく無いはずなのに、ヤツはスキップをしながら猛スピードで坂を下って行った。
―――――はるちゃん、おれのことどう思う?
その一言が頭を何度も何度も駆け巡った。
忘れよう、消そうと思っても頭の中心にあって居なくなってくれない。
なんでそんなこと聞くの?
分かってる。
分かってるよ、本当は。
答えなくても、私は多分ヤツの答えを知っている。
ただ、なんとなく怖い。
答えを知ることが―――――
知ってしまったら今のキョリが保てなくなりそうだから。
そして、気づきつつある自分の気持ちと向き合わなければならなくなるから。
お願い。
もう少しだけ、時間を下さい。
答えは必ず出すから。
「うわっ、びっくりした!」
青々とした葉が生い茂る桜並木から突然ヤツは飛び出して来た。
某ゲームのピカ○○○が出現したのと同じような感覚。
「さっきはごめんなさい」
今日はやけに素直。
いつもは
「はるちゃん、笑ってくれなぁい。ケチぃ」
とかなんとか言う癖に…
裏がありそう。
嫌な予感。
何も話しかけられないうちに立ち去ろうと急ぎ足で歩く。
「待ってぇ」
男だからか走るのは速いらしく、すぐに私の左隣りをキープした。
「ついて来ないで」
「許してくれないの?」
「うん。断じて許しません」
「はるちゃんのケチぃ…」
でたでた、いつもの。
チラッと盗み見すると、ドングリをほっぺに入れすぎたリスみたいに、ヤツはまん丸の頬を膨らませていた。
「じゃあ、許してもらえるように、はるちゃんに良いお知らせをお教えしまぁす」
良い知らせなわけない。
コイツが持ち込むのは、悪い知らせに決まっている。
聞くまでもない。
「来週の花火大会の日、おれ、フリーでぇす!!」
うわっ、そう来たか。
どんな変化球が来ようとドストレートが来ようと私の答えはただ1つ。
「行かない」
「えぇ、なんでぇ!?こんな良い機会めったにないよぉ」
「めったにあります。
少女漫画とか読まないからあんまり分からないけど、夏祭りに花火大会なんてお決まりのパターンじゃない?
私、興味無い。0.1パーセントも0.01パーセントも興味無い。他の女の子誘って」
私がそう言い放つとヤツの割にはかなり真剣な表情になった。
猛暑特有の生ぬるい風が吹き抜ける。
白いワゴン車が急な坂道を大急ぎで上って行く。
後方からの女子の賑やかな笑い声が徐々に大きくなる。
しばらくの沈黙があって、ヤツは口を開いた。
「はるちゃんはおれのこと、どう思う?」
「―――――...えっ?」
不意打ち過ぎる。
頭が質問に追いつかない。
この暑さが思考の回転を遅らせている。
そして、ヤツの真面目な質問内容もそれに加勢して余計に遅くなる。
太陽の光が白い私の肌を焦がす。
...だけじゃない。
私の胸までジリジリと焦がしていく。
「はるちゃん」
ヤツが2度目の沈黙を破るように私の名前を呼んだ。
いつもより、ワントーンもツートーンも低い声で…
「おれはね、はるちゃんじゃなきゃダメなんだ。はるちゃんの代わりはいないんだよ」
私の代わりはいない…?
「おれにとって、はるちゃんは特別だから。その先は言わないで置くけど…」
ヤツはそこまで言ってニンマリと笑った。
さっきまでの刃のような鋭さは夏の暑さで蒸発した。
「じゃあねぇ、また明後日!!」
何も嬉しく無いはずなのに、ヤツはスキップをしながら猛スピードで坂を下って行った。
―――――はるちゃん、おれのことどう思う?
その一言が頭を何度も何度も駆け巡った。
忘れよう、消そうと思っても頭の中心にあって居なくなってくれない。
なんでそんなこと聞くの?
分かってる。
分かってるよ、本当は。
答えなくても、私は多分ヤツの答えを知っている。
ただ、なんとなく怖い。
答えを知ることが―――――
知ってしまったら今のキョリが保てなくなりそうだから。
そして、気づきつつある自分の気持ちと向き合わなければならなくなるから。
お願い。
もう少しだけ、時間を下さい。
答えは必ず出すから。