HARUKA~始~
唐揚げ、揚げすぎた…



今日は体育祭。

気合いを入れて4時半に起き、軽くストレッチをし、アドレナリンを放出させてから調理に取りかかった。
いつもより多めに作ろうと思ったけれど、さすがに多過ぎ。
楽しくなって作り過ぎてしまった。


これから帰ってくるかもしれないあの人がつまみ食いしたとしても残る量だ。


珍しく奮発したのに、どうしょう…










―――――あげよう。








彼の顔が浮かんで、私はすかさず右隅の棚を探った。

今は使われなくなり埃まみれになった男性用の弁当箱を取り出し、洗う。



懐かしい。
私が最初に洗ったのはこれだったと思う。

シャボン玉の歌を陽気に歌いながら、うさぎが描かれたエプロンをして踏み台に乗り、水をピチャピチャ跳ねさせながら楽しんで洗っていた。

遠い昔のことなのに、意外と覚えているものだ。



出来上がった二人分のお弁当を見て、まあまあかと自己評価する。

まあまあでは人にあげられない気もするけど、愛情は込めて作ったつもり。
喜んで食べてくれることを祈る。



でも、どうやって渡そう…



八千草ちゃんに見られたらおしまいだ。

―――――いろんな意味で。




考え込むと行動出来なくなるタイプの人間なので、とりあえず身支度を開始する。

普段は降ろしっぱなしのボサボサロングヘアを今日は丁寧にとかし、ゴムで結んでみる。







私にとって忘れられない2日間が幕を開けようとしていた。
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