HARUKA~始~
汗が吹き出て滝のように流れ落ちる。



現在私はドッヂボールの試合の真っ最中。

当てられないよう、いつも通り逃げ回り残り3人のうちの1人になった。


「晴香ちゃん、横から来るよ!」


私の隣りで俊敏な動きを見せているのは関くん。
サッカーで培われた瞬発力と状況把握能力が活きている。

私は彼のアドバイス通りに動くだけなので非常に楽。
的確なアドバイスのおかげで全く当たらない。


「晴香ちゃん、ボール取れる?」

「いや、ムリ」

「いや、イケる!晴香ちゃんなら、できる!」


私は関くんからどれだけ勇気をもらっているのだろう。

彼の言葉を聞く度に心のメーターは上がっていく。

そして、今も。



目の前からボールが襲いかかってくる。

私は目を閉じて、腕を広げた。

かかって来い!





―――――バンっ




恐る恐る目を開けると、周りの人達が固まっていた。





そっか

ボール、私が持ってるんだ。









――...ん?



持ってる?



私が?





腕の中にすっぽりと埋まっているのは紛れも無くボールだった。







ってことは…





掴めたんだ!





「晴香ちゃん、やったじゃん!」

「うん!」


関くんが大きな手を差し出す。

私はそっと自分の手を重ねた。

関くんの手は私より一回りも二回りも大きかった。

彼の体温が伝わって来て、私はもう大火傷。
ガチゴチに凍った心が今日もまた少し溶けた。


「晴香ちゃん思いっ切り投げて!」


私は首を大きく縦に振ると、全身全霊で腕を回し、ボールを放り投げた。

私の投げたボールはラインギリギリに落ち、相手チームの男子にまんまと拾われる。








―――そして、遂にその時が…






バシンッ…






鈍い音が鳴り響いた。





背中がじわじわと熱を帯び、ズキズキと痛みが増していく。






蒼井晴香、アウトです…







「よくも晴香ちゃんに当てたな!!俺が仇取ってやる!」


コート内に残っていた香園寺くんが私を当てた男子に鋭い眼差しを向け、ボールを思いっ切り投げた。




結果は...


愛の大きさの勝ち。




さすが王子...

本気出したら右に出るものはいない。



「よし、関!2人で全員倒そうぜ!!」

「おう!」


2人は拳を突き出してぶつけ合った。

彼らの心が通った瞬間だった。



私はなんだか胸が熱くなった。

こういうのを友情と言うのだろう。



香園寺くん、今どんな気持ち何だろう?


痛い、かな…


本当は痛いよね?




そんなことを思っているうちにゲームセット。






私のクラスは、ぼろ負け。




でも...



私は嬉しかった。


彼らの素敵な一幕を見られたから。









ありがとう、2人共。
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