HARUKA~始~
クラスには人はあまりおらず、シーンと静まり返っている。

八千草ちゃんは相変わらずベランダで1人関くんを追っていた。


「蒼井ちゃんさあ、関くんと何かあった?」

「いや、別に」

「なんか馴れ馴れしいんだよね~。鼻に付くから止めてもらえる?」


せわしくシャッターを切る音が聞こえる。

グラウンドでは明日のリレーの練習をしていた。

関くんが何かみんなに指示している。


「蒼井ちゃん」

「何?」

「好きになっちゃダメだよ」






――――えっ







「分かってる、よね?私、あなたの秘密知ってるんだから」





息を呑む。


酸素を探す。


胸が苦しい。



「分かってるよ。―――――私、女子バスケ見てくるね」


早足で教室を飛び出した。

廊下を全速力で走り、懐かしいあの場所に帰る。




今は一秒でも早く癒やしてあげたかった。

複雑骨折した、私の心を。

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