HARUKA~始~
今日もか…
下駄箱を開け、自分の上履きが無いのに気づく。
また始まった。
これで人生2度目のイジメ。
教室に入ると冷たい視線がグサッ、グサッと私の心に深く突き刺さる。
傷口から赤い血が滲んで涙となっては現れない。
慣れっこなんだ、こういう状況に。
「蒼井晴香、死ね」
「クズ」
「男たらし」
机の中に置きっぱなしにしていたノートには、書いていた文字が見えないほど大きな字で、心無い言葉が書かれている。
「おはよう、蒼井ちゃん。どう?そのきったな~いノート。もう使えないでしょう?」
「いえ、まだ使えます」
私がそう言うとパシンッと乾いた音が教室中に鳴り響いた。
私は、視線の全てを背中で受け止める。
「あのさぁ、平気そうな顔するの止めてもらえる?」
「止めなよ!」
ドアをガラガラと開け、プリンセスが勢いよく入って来る。
「おはよう、晴香ちゃん。心配しないで。今助けるから。…こっち来て」
私は彼女に右腕を引っ張られながらトイレに連れ込まれる。
それを阻みもしない。
そうしたらどうなるか分かっているから。
ドンーーーッ
上半身にビリビリと電流が走る。
立ち上がろうとするけれど、まるで生まれたての小鹿のように足がガクガク覚束なくて立てない。
目だけはきちんと見張って、彼女の口元をじっと見つめる。
「生意気なんだよ!」
トイレの清掃用雑巾やモップなどを投げつけらる。
お腹にぶつかり、私は一瞬酸素を見失う。
痛い…
痛い…
痛いよ―――――
「アンタなんか居なくなれば良い!生きる価値なんて無いんだよ!!」
バシャン―――――
ボサボサの黒髪から雫がポタポタと落ちてくる。
体はより一層重くなって、もはや立ち上がろうという気力もなくなった。
彼女たちの怒りが一挙に私にのしかかってきた。
「学校くんな!帰れ!」
ドクドクちゃんはそう罵ると何事もなかったかのように立ち去った。
彼女たちからイジメられるのは仕方がないと思うように努力はしている。
八千草ちゃんが好きな人を好きになってしまい、弁当を渡すなんて、彼女になったみたいに馴れ馴れしくしてしまったこと。
石澤玄希に妙に絡まれて、ヤツと私が一緒にいる時間が長いってこと。
それらはいずれも事実。
彼女たちの気分を害してしまったのは紛れも無い事実。
だからって、
だからって、
こんなことされるほど酷いことした?
トイレの薄汚い天井を見上げる。
独特の、鼻にツンとくる臭いが辺りに漂う。
「おはよー」
「ねえねえ、昨日のテレビ見た?」
「マンガ、今日発売だぜ!」
「帰りに本屋に寄って帰ろうぜ!」
「あんたたち、日直!!」
「仕事サボんないで!」
聞こえてくる日常会話。
私には無い。
やっぱり青春は無い。
いや、あったんだけど、それは流れ星のように一瞬で消えて、宇宙の果てに飛んでいってしまったんだ。
きっともうやって来ない。
手を伸ばしても掴めない。
私は一生、暗闇に閉じ込められて出られないんだ。
死にたい。
死にたい。
天国で会いたい。
私にとって一番大切な人に。
私が迷わないように、真っ直ぐ歩いていけるように、雑草をむしって道を舗装してくれた、大切な人に。
会いたいよ。
下駄箱を開け、自分の上履きが無いのに気づく。
また始まった。
これで人生2度目のイジメ。
教室に入ると冷たい視線がグサッ、グサッと私の心に深く突き刺さる。
傷口から赤い血が滲んで涙となっては現れない。
慣れっこなんだ、こういう状況に。
「蒼井晴香、死ね」
「クズ」
「男たらし」
机の中に置きっぱなしにしていたノートには、書いていた文字が見えないほど大きな字で、心無い言葉が書かれている。
「おはよう、蒼井ちゃん。どう?そのきったな~いノート。もう使えないでしょう?」
「いえ、まだ使えます」
私がそう言うとパシンッと乾いた音が教室中に鳴り響いた。
私は、視線の全てを背中で受け止める。
「あのさぁ、平気そうな顔するの止めてもらえる?」
「止めなよ!」
ドアをガラガラと開け、プリンセスが勢いよく入って来る。
「おはよう、晴香ちゃん。心配しないで。今助けるから。…こっち来て」
私は彼女に右腕を引っ張られながらトイレに連れ込まれる。
それを阻みもしない。
そうしたらどうなるか分かっているから。
ドンーーーッ
上半身にビリビリと電流が走る。
立ち上がろうとするけれど、まるで生まれたての小鹿のように足がガクガク覚束なくて立てない。
目だけはきちんと見張って、彼女の口元をじっと見つめる。
「生意気なんだよ!」
トイレの清掃用雑巾やモップなどを投げつけらる。
お腹にぶつかり、私は一瞬酸素を見失う。
痛い…
痛い…
痛いよ―――――
「アンタなんか居なくなれば良い!生きる価値なんて無いんだよ!!」
バシャン―――――
ボサボサの黒髪から雫がポタポタと落ちてくる。
体はより一層重くなって、もはや立ち上がろうという気力もなくなった。
彼女たちの怒りが一挙に私にのしかかってきた。
「学校くんな!帰れ!」
ドクドクちゃんはそう罵ると何事もなかったかのように立ち去った。
彼女たちからイジメられるのは仕方がないと思うように努力はしている。
八千草ちゃんが好きな人を好きになってしまい、弁当を渡すなんて、彼女になったみたいに馴れ馴れしくしてしまったこと。
石澤玄希に妙に絡まれて、ヤツと私が一緒にいる時間が長いってこと。
それらはいずれも事実。
彼女たちの気分を害してしまったのは紛れも無い事実。
だからって、
だからって、
こんなことされるほど酷いことした?
トイレの薄汚い天井を見上げる。
独特の、鼻にツンとくる臭いが辺りに漂う。
「おはよー」
「ねえねえ、昨日のテレビ見た?」
「マンガ、今日発売だぜ!」
「帰りに本屋に寄って帰ろうぜ!」
「あんたたち、日直!!」
「仕事サボんないで!」
聞こえてくる日常会話。
私には無い。
やっぱり青春は無い。
いや、あったんだけど、それは流れ星のように一瞬で消えて、宇宙の果てに飛んでいってしまったんだ。
きっともうやって来ない。
手を伸ばしても掴めない。
私は一生、暗闇に閉じ込められて出られないんだ。
死にたい。
死にたい。
天国で会いたい。
私にとって一番大切な人に。
私が迷わないように、真っ直ぐ歩いていけるように、雑草をむしって道を舗装してくれた、大切な人に。
会いたいよ。