HARUKA~始~
「ハルカ~」
えっ?
私?
辺りをキョロキョロと見回しても知り合いはいない。
そもそも、私を「ハルカ」と呼び捨てにできるほど親しい人はここにはいないはず…
「ハルカ~、ナイシュー」
ナイシュー?
―――――ナイス、シュート…か。
ちょうど体育館のドアが開いていて、中の様子を見ることができたので、タコのようにベタリと張り付き、中をそっと覗き見る。
練習していたのは男子バスケ部だった。
ハルカって男!?
驚いて若干身を乗り出していると
「ハルカ、パス」とまた名前が呼ばれた。
目をかっと見開き、ボールを両手でガシッと受け取った男子を見た。
バスケ部らしく長身でスラッとしていて、
一体何等身なのだろう、とまるで女性を見るような目で見てしまう。
それほど美しい男の子だった。
他の男子とは明らかに異なるオーラを放っていて、その存在感はコートの中でも一際大きい。
同じ名前なのに、こんなにも輝きが違うとは…
私のひがみ根性は益々深刻になりそう。
ふーーっ
ため息をひとつついて再び歩き出す。
ふと私は空気みたいだなぁと思った。
誰にも触れられなくて、触れてほしくなくて、常に漂うだけの空気。
確かにあるはずなのに、その存在は意識しなければ日常生活では感じられないし、大切だと実感出来ない。
今生きていられるのは空気があるからなのになぁ…
誰か気づいてくれないかなぁ…
桜のトンネルはまだまだ準備段階。
寒い冬をじっと耐えて、咲くべき時を見計らっているのだろう。
『桜が咲く頃までは生きたいな…』
その言葉が脳裏をよぎった。
大切な人が、私に会う度に口にしていた言葉。
『だって晴香は春に産まれたんだから、春は笑って桜を見たいじゃない?』
大切な人がしっかりと私の目を見つめて言った言葉。
春はもう少し、
もう少しで…やってくるよ。
一番大きな桜の幹に触れる。
脈々と途絶えること無く流れている命の息吹をそこに感じた。
一気に全身に莫大なエネルギーが伝わって私の身体に流れ込む。
大切な人を失ってから、生きる意味って何だろう、私生きてて良いのかな、と何度も考えた。
でも答えは出ないし、時に生きる希望が見えなくなることもある。
けど、それで良いのかもしれない。
分からなくても、知らなくてもいいんだ。
今を生きる中で見つければいい。
そう思い込むことにする。
桜のトンネルをいつもより長い時間をかけて歩き、駅までやってきて電車に乗る。
ビルが新たに建設されるらしい。足場が組まれ、作業員が高いビルの周りを幾度と無く行き来している。
川の流れはいつ見ても穏やかだ。
今日は春休みに入った小学生の男子たちがワイワイ水遊びをしている。
変わりゆくもの
変わらないもの
その全てがこの地球に共存している。
私の心の中もいずれこうなるのかな…
そんなことを考えていたら、アナウンスが流れ出した。
えっ?
私?
辺りをキョロキョロと見回しても知り合いはいない。
そもそも、私を「ハルカ」と呼び捨てにできるほど親しい人はここにはいないはず…
「ハルカ~、ナイシュー」
ナイシュー?
―――――ナイス、シュート…か。
ちょうど体育館のドアが開いていて、中の様子を見ることができたので、タコのようにベタリと張り付き、中をそっと覗き見る。
練習していたのは男子バスケ部だった。
ハルカって男!?
驚いて若干身を乗り出していると
「ハルカ、パス」とまた名前が呼ばれた。
目をかっと見開き、ボールを両手でガシッと受け取った男子を見た。
バスケ部らしく長身でスラッとしていて、
一体何等身なのだろう、とまるで女性を見るような目で見てしまう。
それほど美しい男の子だった。
他の男子とは明らかに異なるオーラを放っていて、その存在感はコートの中でも一際大きい。
同じ名前なのに、こんなにも輝きが違うとは…
私のひがみ根性は益々深刻になりそう。
ふーーっ
ため息をひとつついて再び歩き出す。
ふと私は空気みたいだなぁと思った。
誰にも触れられなくて、触れてほしくなくて、常に漂うだけの空気。
確かにあるはずなのに、その存在は意識しなければ日常生活では感じられないし、大切だと実感出来ない。
今生きていられるのは空気があるからなのになぁ…
誰か気づいてくれないかなぁ…
桜のトンネルはまだまだ準備段階。
寒い冬をじっと耐えて、咲くべき時を見計らっているのだろう。
『桜が咲く頃までは生きたいな…』
その言葉が脳裏をよぎった。
大切な人が、私に会う度に口にしていた言葉。
『だって晴香は春に産まれたんだから、春は笑って桜を見たいじゃない?』
大切な人がしっかりと私の目を見つめて言った言葉。
春はもう少し、
もう少しで…やってくるよ。
一番大きな桜の幹に触れる。
脈々と途絶えること無く流れている命の息吹をそこに感じた。
一気に全身に莫大なエネルギーが伝わって私の身体に流れ込む。
大切な人を失ってから、生きる意味って何だろう、私生きてて良いのかな、と何度も考えた。
でも答えは出ないし、時に生きる希望が見えなくなることもある。
けど、それで良いのかもしれない。
分からなくても、知らなくてもいいんだ。
今を生きる中で見つければいい。
そう思い込むことにする。
桜のトンネルをいつもより長い時間をかけて歩き、駅までやってきて電車に乗る。
ビルが新たに建設されるらしい。足場が組まれ、作業員が高いビルの周りを幾度と無く行き来している。
川の流れはいつ見ても穏やかだ。
今日は春休みに入った小学生の男子たちがワイワイ水遊びをしている。
変わりゆくもの
変わらないもの
その全てがこの地球に共存している。
私の心の中もいずれこうなるのかな…
そんなことを考えていたら、アナウンスが流れ出した。