イケメン双子と、もちろん『腐』の付く愛され女子と。

「まあ、いいじゃない。わたしの楽しみのひとつなんだから、妄想ぐらい好きにさせて、ね?」

「「ウィー!!」」

 たとえ汚れてようと爛れてようと、彼女が小首を傾げてお願いすると、どんな無謀な願いでも聞き入れる双子であった。なんとも嘆かわしいが、彼らはスムズアップで快諾をした。

 一昔まえの翡翠ヶ丘の大地は、一度雪が降り出すと辺り一面、白銀の世界になったという。けれども年々と、その積雪量は減少の一途を辿るばかりであった。

 だが今日は、来し方の翡翠ヶ丘へと回帰したようだ。こんこんと降りしきる雪は、やむ気配さえ見せないでいる。ことに温暖化が進む現代の翡翠ヶ丘において、異常ともいえる光景であった。

「おい碧羽、そこの踏み石凍ってるぞ。危ねえから俺の手に掴まってろ」

「わあ、ほんとだあ。キラキラ光ってるね、綺麗♪ よく気づいたね漸、ありがとう」

 今日の碧羽はと言うと、『atelier-TSUBAKI(アトリエ ツバキ)』の和装部門より厳選された、本振り袖という出で立ちであった。

 淡い桃色地に、蝶紋や辻が花に亀甲といった、華やかでいて吉兆を顕す意匠が染めや金襴刺繍で施された、贅を尽くした素晴らしい一枚だ。
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