イケメン双子と、もちろん『腐』の付く愛され女子と。
帯は西陣に依頼し、特注で織らせた本袋帯。それに合わせた小物や、シルバーフォックスの襟巻きなどは、『atelier-TSUBAKI』オリジナルだ。
因みに『atelier-TSUBAKI』というのは、双子の母親が経営するファッションブランドだ。然しもの今日は初詣ということで、嬉々として双子の母親が張り切って碧羽に着付けたのであった。
だがそこは経営者、『着て歩いて見せびらかして』宣伝をして来いとの、暗澹(あんたん)たる意図が隠されていた。
それをすべからく察知するのは双子ではあったが、これに関しては始終沈黙を保ったという。なぜならば、心を鬼にすることにより、碧羽の晴れ姿を拝めるからに他ならない。
(うわあ、漸のやつ、巧い手使ってくるよねえ)
滑りやすい草履で歩く碧羽に対し、足許が滑るからという理由で、小賢しく彼女の手を取った漸。それを横目に、凛は顔で笑い腹でドス黒く渦巻く、悪魔的思考を張りめぐらせた。
「ねえ碧羽、参道の真ん中を歩いてたら危ないんじゃない? 僕の右側って砂利道になってるから、こっち歩きなよ」
「ああ、ほんとだあ。凛て頭がいいんだね♪ じゃあそうしようかな。漸ごめん、わたし凛の隣に行くね」