イケメン双子と、もちろん『腐』の付く愛され女子と。
「おい……何ふたりして、ムカつく空気つくってんだよ。つか凛てめえ、そっち側に行けよ! 碧羽が階段上るなら、両サイドでサポートしてやった方が安全だろーが」
分の悪い自身の立場を慮ってか、漸はやけに強気な態度でそう言い放った。
「へえ……漸のクセに、鋭いとこ突いてくるよね。却下したいところではあるけど、碧羽のためだ仕方がないね。じゃあ碧羽、僕らのあいだで掴まっておいで」
いつもは自意識過剰……自信満々な凛ではあるが、理路整然と並んだ漸の口上に対し、然しもの凛も今回ばかりは引き下がるしかなかったようだ。
「うん、わかった。漸ただいま」
「おう、しっかり掴まっとけよ。境内に着いたら、甘酒飲もうな」
「はーい♪ そういえば、初等部の頃は毎年三人で甘酒飲んだっけ。懐かしいなあ。今も甘酒屋さん、やってるのかなあ」
「ああ、クラスの奴らがやってるって言ってた。碧羽は甘酒が好きだったよな、毎年旨そうに飲んでるすがた、今でも覚えてんぜ」
それだけ言い切ると、漸は頬を染めてそっぽを向いてしまった。おそらく在りし日の碧羽を想起して、妄想街道を独走してしまったのだろう。
健康的な青少年の正しき反応ではあるが、テレ処が一々初々しい彼の反応は如何なものか。そんな稀有な無垢さを誇る弟を、生温かく見守る兄の生き様は……汚れまくっていた。