【短】キミに触れるだけで
「ね、どこに行きたい?なんかリクエストある?なけりゃ俺の好きにさせてもらっちゃうけど…」
「…っ。…うみ…」
「え?」
「海に…行きたい、な。私も、直翔くんとちゃんと話がしたい、から…」
ジッと見つめられて、カァーっと首の後ろ辺りが日焼けしたみたいに赤くなるのを感じた。
なんで、こう…。
彼女は俺の心を騒がせることに長けているのか。
そんなことを言われて、嬉しくないわけがない。
ぎゅっと、握った手に少しだけ力を入れてにっこり微笑んだ。
「うん。行こうよ、海。で、いっぱい話そ?」
そこで、ふと抱き締めたい衝動に駆られるけれど、今はまだ街の中。
今はまだ、今だけは…我慢しよう。
せめて、二人きりになるまでは…。