【短】キミに触れるだけで


ザザァン…。



波の音が、耳に心地良い。
二人でいられることがこの上なく幸せだった。


「キレイ…」


沈み掛けた太陽の光が、彼女を包み込んでいた。
キラキラ輝く海面と、光の中で眩しそうにしている彼女の方がとてもキレイで、だけどどこか儚くて…。
思わず、何も言わずに後ろから抱き締めた。

一瞬びくんっとする彼女。
でも、すぐに、俺に少し体を預けてくれた。


「…どこにも、いかないでよ、ね…?」


「…私は、どこにも行かないよ?ずっと、ココにいるよ…?」


「…ココって、どこ?」


答えはもう分かっているのに、俺はちょっぴり意地悪をした。
すると彼女は少し照れ臭そうにしてから、俺の心臓辺りに、こつんと頭を寄せてきて…。


「ココに、だよ…?」


と、だけ呟いた。
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