レストラン化物堂 ~人と化物の間、取り持ちます~
私たちが夜の町を行く不思議な集団に出くわしたのは、その直後でした。
その集団は私の膝ぐらいしか背丈がありませんでした。そのくせ二本足で立って、灯りを担いで歩いています。私は彼らを見て目を瞬かせました。
「――猫?」
そう、そこにいたのは二足歩行をする猫だったのです。
「おうおうおう、この前の兄ちゃんじゃねえの」
「あん時は人間に邪魔されちまったが、今日は逃がさねえぞ」
「おら、そっちの嬢ちゃんたちも、有り金全部置いてきな」
こ、これはカツアゲです! 初めて遭いました、こんなテンプレみたいなカツアゲ!
二足歩行の猫さんたちは思わず固まる私たちに構わず、徐々に距離を詰めてきます。桜子先輩が視界の端でにやりと笑ったのが見えました。
「ほう、わしに喧嘩を売るとはいい度胸じゃの?」
「あ?」
「なんだこの女?」
見上げてくる猫さんたちを無視して、桜子先輩は手の平を上に向けると、手の中に火の玉を作り出しました。そして、まだ何が起こっているのか理解できていない猫さんたちめがけて、火の玉を投げつけたのです。
「ぎゃあ!」
「あちぃ!」
最前列にいた猫さんたちは火の玉に触られて逃げ転がりました。その頃になってようやく、後ろに立っていた猫さんたちも状況を把握したらしく、桜子先輩を指して騒ぎ始めました。
「こ、こいつ、化物堂の狐火だ!」
「なんだと!」
「あの凶暴で有名の!?」
「極悪非道なわがまま娘の!?」
「誰が凶暴じゃ! 誰が極悪非道じゃ!!」
むきー! とさらに怒り狂い、辺りに火の玉が乱舞します。猫さんたちは火の玉に追いかけ回され、気付いたときには桜子先輩の前で全員が土下座をしていました。
「すみませんでした!」
「すみませんでした!」
「二度としませんので命ばかりはご勘弁を!」
「こんなものでは済まさぬぞ……わしを侮辱した罪は重いのじゃ!」
ひええ、と猫さんたちから声が上がります。
「すみません! 俺たち、今縄張りを広げようと必死だったんです!」
「喧嘩を売ったことは謝ります! 見逃してください!」
「ええい、ならん! そこになおれ!」
その時、さらに火の玉をけしかけようとした桜子先輩の腕を止めたのは、化田さんでした。
「そのくらいにしておこうよ、桜子ちゃん。猫又さんたちが可哀想だよお」
化田さんは泣きそうな顔で桜子先輩を止めようとします。桜子先輩は化田さんの顔を見て、フンと鼻を鳴らした後、火の玉を消してみせました。
「ごめんねえ、猫又さんたち。怖かったよねえ」
化田さんがしゃがみこんでそう言うと、猫又さんたちはべそをかきはじめました。対する桜子先輩は怒り冷めやらぬ様子で髪をいじっています。しばらくそうしていた後、猫さんたちと話していた化田さんは、私たちを見上げてきました。
「桜子ちゃん、よだかちゃん。この子たち、何か事情があるみたいだよお、聞いてあげよう?」
その集団は私の膝ぐらいしか背丈がありませんでした。そのくせ二本足で立って、灯りを担いで歩いています。私は彼らを見て目を瞬かせました。
「――猫?」
そう、そこにいたのは二足歩行をする猫だったのです。
「おうおうおう、この前の兄ちゃんじゃねえの」
「あん時は人間に邪魔されちまったが、今日は逃がさねえぞ」
「おら、そっちの嬢ちゃんたちも、有り金全部置いてきな」
こ、これはカツアゲです! 初めて遭いました、こんなテンプレみたいなカツアゲ!
二足歩行の猫さんたちは思わず固まる私たちに構わず、徐々に距離を詰めてきます。桜子先輩が視界の端でにやりと笑ったのが見えました。
「ほう、わしに喧嘩を売るとはいい度胸じゃの?」
「あ?」
「なんだこの女?」
見上げてくる猫さんたちを無視して、桜子先輩は手の平を上に向けると、手の中に火の玉を作り出しました。そして、まだ何が起こっているのか理解できていない猫さんたちめがけて、火の玉を投げつけたのです。
「ぎゃあ!」
「あちぃ!」
最前列にいた猫さんたちは火の玉に触られて逃げ転がりました。その頃になってようやく、後ろに立っていた猫さんたちも状況を把握したらしく、桜子先輩を指して騒ぎ始めました。
「こ、こいつ、化物堂の狐火だ!」
「なんだと!」
「あの凶暴で有名の!?」
「極悪非道なわがまま娘の!?」
「誰が凶暴じゃ! 誰が極悪非道じゃ!!」
むきー! とさらに怒り狂い、辺りに火の玉が乱舞します。猫さんたちは火の玉に追いかけ回され、気付いたときには桜子先輩の前で全員が土下座をしていました。
「すみませんでした!」
「すみませんでした!」
「二度としませんので命ばかりはご勘弁を!」
「こんなものでは済まさぬぞ……わしを侮辱した罪は重いのじゃ!」
ひええ、と猫さんたちから声が上がります。
「すみません! 俺たち、今縄張りを広げようと必死だったんです!」
「喧嘩を売ったことは謝ります! 見逃してください!」
「ええい、ならん! そこになおれ!」
その時、さらに火の玉をけしかけようとした桜子先輩の腕を止めたのは、化田さんでした。
「そのくらいにしておこうよ、桜子ちゃん。猫又さんたちが可哀想だよお」
化田さんは泣きそうな顔で桜子先輩を止めようとします。桜子先輩は化田さんの顔を見て、フンと鼻を鳴らした後、火の玉を消してみせました。
「ごめんねえ、猫又さんたち。怖かったよねえ」
化田さんがしゃがみこんでそう言うと、猫又さんたちはべそをかきはじめました。対する桜子先輩は怒り冷めやらぬ様子で髪をいじっています。しばらくそうしていた後、猫さんたちと話していた化田さんは、私たちを見上げてきました。
「桜子ちゃん、よだかちゃん。この子たち、何か事情があるみたいだよお、聞いてあげよう?」