レストラン化物堂 ~人と化物の間、取り持ちます~
「あーあ、ひどい目にあった!」
私は手を使わずに、床に置いてある三つの雑巾を動かして、床に落ちた水を拭っていきます。何ということはない。ただのサイコキネシスというやつです。
美奈さんたちはそんな私の様子をぽかんと口を開けて眺めていました。
「どうかされましたか?」
「え、ええと、その、あなたたちは一体……?」
私は合点がいって頷きました。そうですそうです、これが普通の反応でした。最近、化物ばっかり相手にしているから忘れていました。
「ああ、そこの桜子先輩は化け狐なんです。椿屋先輩はよく知らないけど木の精、そして私は超能力者!」
堂々と胸を張ってみます。美奈さんたちはまだぽかんと口を開けたままです。
「ここってそういう人が集まるレストランなんです。あっ、内緒ですよ!」
人差し指を口の前に持ってきてシーと言うと、美奈さんたちもつられてシーと言っていました。
その時、桜子先輩がえっちらおっちら料理を両手で運んできました。
「お待たせいたしました、Aセットでございます」
「あっ、普通に料理は来るんだ……」
どうやら驚愕の連続で、美奈さんたちの思考スピードは落ちているようです。呆然と呟いてAセットを見つめる美奈さんたちを置いて、私たちは裏に戻っていきました。
美奈さんたちは、心ここにあらずといった様子で、ほとんど会話らしい会話もせずぼんやりとAセットを口に運んでいました。あちゃー。悪いことをしてしまいました。楽しい朝の時間が台無しです。
そうやって裏からその様子を覗いていた私の肩を、とんとんと叩く人物がいました。
「…………」
「店長?」
私を呼んだ店長は、無言でトレーの上に乗ったいくつかの小物を差し出しました。私は少しの間首をひねりましたが、すぐにその意図をくみ取ると、大きく頷きました。
「なるほど、そういうことですね! まっかせてください!」
軽食を食べ終わった二人は出口近くのレジへと向かいます。私はそこにトレーを持って近づきました。
美奈さんたちから代金をいただき、二人がふらふらと店を去ろうとするのを、私は呼び止めます。
「あの!」
「は、はい!」
振り向いた美奈さんたちに私はトレーを差し出しました。
「ご迷惑をおかけしたお詫びです。どうぞお好きなものを一個ずつお持ちください」
トレーの上に乗せられていたのは、いくつかのアンティーク調の小物――手鏡や鈴、コンパクトや鍵などといったものでした。
「ええっ、そんな悪いです!」
「大丈夫大丈夫。実はこれ、お子様ランチのおまけなんです。だから、見た目はすごくてもただのおもちゃなんですよ」
二人は目を見合わせ「それなら……」と言って、それぞれ小物を手に取りました。二人が選んだものを見て、私は声を上げます。
「おお、お目が高い!」
美奈さんが選んだのは手鏡、もう一方が選んだのは鈴でした。私は得意満面になりながら解説を始めました。
「こっちはですね、映すものの正体を見破る鏡で、そっちは――何だったかな。えっと、鈴です! 鈴!」
そういう設定なんです! と胸を張ると、美奈さんたちは何度も小物を裏返しながら感嘆の声を上げます。
「わあ、普通に使えそう……」
「帰ったらミケにつけてあげようかな……」
美奈さんたちはそうやって会話しながら、出口のドアをくぐっていきました。私はその背中に頭を下げます。
「ありがとうございましたー!」
私は手を使わずに、床に置いてある三つの雑巾を動かして、床に落ちた水を拭っていきます。何ということはない。ただのサイコキネシスというやつです。
美奈さんたちはそんな私の様子をぽかんと口を開けて眺めていました。
「どうかされましたか?」
「え、ええと、その、あなたたちは一体……?」
私は合点がいって頷きました。そうですそうです、これが普通の反応でした。最近、化物ばっかり相手にしているから忘れていました。
「ああ、そこの桜子先輩は化け狐なんです。椿屋先輩はよく知らないけど木の精、そして私は超能力者!」
堂々と胸を張ってみます。美奈さんたちはまだぽかんと口を開けたままです。
「ここってそういう人が集まるレストランなんです。あっ、内緒ですよ!」
人差し指を口の前に持ってきてシーと言うと、美奈さんたちもつられてシーと言っていました。
その時、桜子先輩がえっちらおっちら料理を両手で運んできました。
「お待たせいたしました、Aセットでございます」
「あっ、普通に料理は来るんだ……」
どうやら驚愕の連続で、美奈さんたちの思考スピードは落ちているようです。呆然と呟いてAセットを見つめる美奈さんたちを置いて、私たちは裏に戻っていきました。
美奈さんたちは、心ここにあらずといった様子で、ほとんど会話らしい会話もせずぼんやりとAセットを口に運んでいました。あちゃー。悪いことをしてしまいました。楽しい朝の時間が台無しです。
そうやって裏からその様子を覗いていた私の肩を、とんとんと叩く人物がいました。
「…………」
「店長?」
私を呼んだ店長は、無言でトレーの上に乗ったいくつかの小物を差し出しました。私は少しの間首をひねりましたが、すぐにその意図をくみ取ると、大きく頷きました。
「なるほど、そういうことですね! まっかせてください!」
軽食を食べ終わった二人は出口近くのレジへと向かいます。私はそこにトレーを持って近づきました。
美奈さんたちから代金をいただき、二人がふらふらと店を去ろうとするのを、私は呼び止めます。
「あの!」
「は、はい!」
振り向いた美奈さんたちに私はトレーを差し出しました。
「ご迷惑をおかけしたお詫びです。どうぞお好きなものを一個ずつお持ちください」
トレーの上に乗せられていたのは、いくつかのアンティーク調の小物――手鏡や鈴、コンパクトや鍵などといったものでした。
「ええっ、そんな悪いです!」
「大丈夫大丈夫。実はこれ、お子様ランチのおまけなんです。だから、見た目はすごくてもただのおもちゃなんですよ」
二人は目を見合わせ「それなら……」と言って、それぞれ小物を手に取りました。二人が選んだものを見て、私は声を上げます。
「おお、お目が高い!」
美奈さんが選んだのは手鏡、もう一方が選んだのは鈴でした。私は得意満面になりながら解説を始めました。
「こっちはですね、映すものの正体を見破る鏡で、そっちは――何だったかな。えっと、鈴です! 鈴!」
そういう設定なんです! と胸を張ると、美奈さんたちは何度も小物を裏返しながら感嘆の声を上げます。
「わあ、普通に使えそう……」
「帰ったらミケにつけてあげようかな……」
美奈さんたちはそうやって会話しながら、出口のドアをくぐっていきました。私はその背中に頭を下げます。
「ありがとうございましたー!」